『合がけカレーの味は変わらねど… ー豊洲新市場 見聞録ー』

東京都中央卸売市場」の「場内市場」が築地から豊洲に移転して、早くも数週間が経とうとしています。

先日、近所から夕餉のカレーの香が漂ってきた時のことです。「…ああ、“中栄”の合いがけカレーが食べたいな…、味、変わってないかな…“ふぢの”は少し値上がりしたはずだけど、“中栄”はどうなんだろう?…」「“吉野家一号店”は名前が変わり裏メニューがなくなったと聞いているけど…」
そんな具合に移転した市場への思いが沸々と募ってきて、矢も盾もたまらず豊洲新市場」に足を運んできました。

「そうだ、どうせ行くなら久々にマグロの競りをみてみようじゃないか!」そう思い立ち、某有名レストランのシェフである友だちとつるんで、外はまだ暗闇に包まれているなか家を出発。まず目指すは「有楽町線 新富町駅」です。
5時5分発の始発電車に乗り、2駅先の豊洲駅へ。そこから「ゆりかもめ」に乗り換えて「市場前」駅で下車。ちなみに電車代は、新富町豊洲が165円、豊洲~市場前が185円です。

始発だというのに有楽町線ゆりかもめもそこそこ人が乗っていて、その多くは自分達と同様に豊洲新市場へ向かう人達でした。
「竹製の例の“市場かご”を持つ人は仲卸棟で買い出しだな…」「あの10代の若い娘たちは市場の関係者だ、これからお店に出勤か…」「この東欧系らしき外国人の家族連れ、こんな時間に移転したばかりの豊洲に来るなんて、結構日本通かも…」
ゆりかもめに揺られながらそんなことを思っているうちに、程なく「市場前駅」に到着。

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2階の改札口を出た眼前には、大通りの左右に広大な市場のビルが左右に広がっていました。

完璧な予習や下調べはしてこなかったので、左右どちら側でマグロの競りが行われているの分からず、取り合えずは人の流れの主流となっている右側に行ってみることにしました。
そして入り口で見学者用のパスをもらい棟の中に入り、しばらく中を徘徊しているうちに…どうやらここは「水産仲卸売場棟」だということに気づきました。
「仲卸の店があるから当然従業員はこちらに向かう、買い物もできるから一般客もくる、だからこちらに人の流れが多かったんだ」と、しばらくしてようやく気づいた次第です。
しかもあの懐かしのカレーの「中栄」も中華「ふぢの」吉野家もこちら側にある!「こりゃ~、いきなり爆食かい!?」との衝動にも駆られましたが、マグロの競りが終わってしまっては元も子もないので、一度駅に戻って、左側の「水産卸売場棟」に向かいました。

駅の時計見ると時計の針は既に5時30分近くになっており、「こりゃ遅刻か?いか~ん!!」と小走りに左側の「水産卸売場棟」に駆け込みました。
そして棟内に入り再び見学者用のパスをもらい奥に進むと…そこにはガラス越しにマグロの競りを見下ろす人々の顔、顔、顔が。
どうやらまだ競りには間に合いました、マグロは冷凍モノでしたが…。

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こんな感じで、俯瞰のガラス越しですが「マグロの競り」を目の当たりにすることができました。目的が達成できて、また新市場でも競りが活発に行われていることを目の当たりにできて、少しホッとしました。
…でもでも、30年前に眼前の至近距離から撮影した築地時代の競りのド迫力の臨場感は全く感じることができず、それはやっぱり寂しかった…


…そんなこんなで「マグロの競りを見る」というミッションをクリアした私達は、再び「水産仲卸売場棟」に戻ることに。少し時間をかけてゆっくりと棟内を見学すべし!と決めた次第です。
さて、いざ棟内に入ると…小ぢんまりと区切られた区画に、乾物屋、マグロ屋、青果店等など、所狭しと色々な店舗が軒を並べていました。

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…ここで少しばかり驚かされたのは、室内の狭い通路をターレやバイクが走り回っていた事。考えてみれば築地時代はターレやバイクが路上を走り回るのは当たり前の風景だったけど、それは地上1階の地面の上。ここ豊洲はビルの3階の蛍光灯が煌々と灯っている、明るいビルの中の狭い通路なんです。危ないとかそういうのではなく、「何か変…」。ちょっと不思議な間隔を覚えました。

それと各店舗を見て感じたのは、総じてお店が狭いということでした。鮮魚店なんか、どこで魚を捌くんだろう?って感じでした…。
またビルは新しくて近代的なのに、それがとにかく生臭い…もちろん魚河岸だから当たり前なんだけど、ビルが近代的で室内で明かるいから、すごくミスマッチな違和感を感じるのです。
勝手な思い込みかもしれませんが、“市場”ってこんなイメージかと…。

 

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タイ・バンコクのとある市場

飲食業に携わっているダチもひと言、「…風情がない…!」


…まあ、不満ばかり漏らしていても埒が明きませんので、次の目的の「爆食」に移ることに。
…するとありましたありました築地場内にあった数々の懐かしの名店が。
まず目に止まったのは「寿司大」の店舗前の行列です。まだ6時前にして写真のように既に大賑わい、完全に一人勝ちの様相を呈してました。

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私達はそんな行列を横目に通り過ぎ「吉野家」を、そして「中栄」と「ふぢの」を発見。流石に3軒ハシゴは厳しいということで、「吉野家」は次にして、「中栄」と「ふぢの」をハシゴすることに。
まずは大正時代から続く老舗のカレー屋「中栄」に。私は迷わず、インドカレービーフカレーの「合いがけカレー」を選択。「さあ、味わどうだ~?」以前と変わっていないか若干不安ではあったのですが、一口頬張っただけで、それは杞憂だとわかってひと安心。昔のまんまの美味しい味、しかも値段も据え置き。素晴らしい!

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そして食べ終わるや否や、すぐ側にある「ふぢの」で食券を購入。私の注文は当然ラーメンです。こちらは移転前から告知されていたように少し値上げされていましたが、それでも30円ほど。新市場で色々とコストもかかるでしょう。それでこの値上げ幅なら、むしろ良心的ですよ。
そうそう肝心の味の方はというと…ラーメンも美味いし、仏頂面したおばちゃんも変わらず健在でしたよ!(笑)

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…そんなこんなで、取り敢えずこの日の目的は達成した私達は、帰りは腹ごなしに徒歩で築地まで歩いてみようということに。

環状2号線の開通は来る11月4日ですので、ゆりかもめの駅一つ分歩いて、晴海大橋を抜け、晴海通りを真っ直ぐに歩き、勝鬨橋を目指しました。来た時は暗闇に包まれていた街もすっかり日が昇り、空は見事な秋晴れ。
目的が達成できた満足感と、新市場に対する不安と少しの不満を抱えながら、晴海通りを豊洲から築地へと闊歩したある秋の朝でした…。

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※この後は実は築地場外市場場内の跡地、そして環状2号線の様子などを見に行ったのですが、それはまた次回に報告させていただきます。

今度の日曜11月4日に環状2号線は開通予定ですが、開通前の現場や元築地場内の様子も写真に収めています。開通前と開通後の状況を比べてみるのも一興でしょう。ではまた!