幻の渡し船
『渡し船』に乗ったことありますか?
私は『悠久の大河 タイのチャオプラヤ川』の『渡し船』の得も言われる風情が大好きで、タイに行くたびに利用しています。市場の人いきれの中を縫うように抜けて乗船、ゆっくりと岸を離れると、やがてトンブリ側にたどり着きます。
対岸と対岸を、街と街を、そして人と人を繋ぐ『渡し船』にとてもロマンを感じるのです。
少し前になりますが、日本でも
名曲『矢切の渡し』で知られる柴又の『矢切の渡し』に揺られてきました。
市川側から木の船に乗りゆらゆら揺られながら江戸川の水面を滑り、柴又へ到着。
たゆとうように流れる贅沢な時を五感で体感することができました。
そんな『渡し船』が、実はここ築地近辺にも、かつてはあったんですよ!
まずは『佃の渡し』です。
こちらは17世紀中頃から漁民や見物客(月見や花見客)が主に利用し、現在の佃大橋が完成するまではあったんです。佃大橋の完成は昭和39年ですから、「佃の渡し」がある頃に私は既に生まれていました。しかし幼少だったので「佃の渡し」が記憶にないのが、とても残念です。
そして『勝鬨(かちどき)の渡し』です。
こちらは明治38年に日露戦争の勝利を記念して命名された渡しで、明治29年にできた『月島の渡し』とともに、昭和15年の勝鬨橋の完成により、姿を消したとのことです。
『月島の渡し』は、現在の水上バスの明石町の船着所あたりと対岸の月島を結んでいたようですよ。
時と共に姿を消した風情ある隅田川の渡し舟に乗ることは残念ながらもうできませんが、水上バスにその面影が残されているのではないでしょうか?
潮香る夏の夕暮れ時、ゆらり揺られてみてはいかがでしょうか?